pixivにSSを投稿しはじめた

(2016/5/15追記)

放課後のプレアデスのSSを書いた。あおいの友人(よくわからない洲崎綾)、受

 

天体のメソッドのSSを書いた。出来心だった。


(2015/10/24追記)

天体のメソッドのSSを書いた。こはるの境遇が好きすぎてつい。

2015/9/20追記)

放課後のプレアデスのSSを書いた。みなと君には幸せになってほしい。

2015/8/5追記)

放課後のプレアデスのSSを書いた。あおいの友人(よくわからない洲崎綾)が暴走した。

(以下2015/5/10更新)

前者はごちうさの百合もどき、後者は天体のメソッドの過去補完。
ちなみに後者はBD5巻の特典内容(久弥直樹のショートノベル)次第で修正ないし黒歴史入りになる可能性が高い……。

二次創作というものに初めて手をつけてみたけど、これは楽しい。ごっこ遊びと人形遊びを織り交ぜたような面白みがある。なんか間違っている気がしないでもないが。
数ヶ月に一本は創れたらいいなあと思う。

『TVアニメ「聖剣使いの禁呪詠唱」亜鐘学園学園祭~We are the・夏~』に行ってきた(夜の部)

今日のこの日を、私はきっと忘れることはないでしょう。
諸葉さんが帰ってきて、みんなの笑顔が眩しいこの日のことを。
そう、たとえ何度生まれ変わったとしても。

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再び綴るッ!

 昼の部からぶっちぎれていた竹達さんの脱力ツイートを見て脱力しながら開場を待つ。
ちょうどこの頃合に思い…出しタオルが完売した。もう1枚くらい買っておけばよかったかな、と思わなくもない。

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開場。中では昼の部同様キャラソンアルバムが流れている。良い。モモ先輩のSPEED DEMON、サツキ&静乃のBELIEFが特に気に入っています。
小1時間ほど経って諸葉さんのアナウンスが入り、やはり最初は

①開幕ライブ。
『緋ノ糸輪廻ノGEMINI』、心なしか昼の部よりも観客の統制が取れている感じがする。それにしてもこの曲はどうして聴いていると熱さと笑いがこみあげてくるのだろう。メインテーマと双璧をなす、本作を象徴する曲だ。


②キャラクター紹介ムービー
昼の部の記事で書いたため省略。

ムービーが終わると昼と同様キャスト陣が舞台に上がってくる。石川プロのいでたちが微妙に変わっている。あれは……詠唱文字Tシャツ! やっぱりプロは最強の救世主だと改めて確信した。
竹達さん、悠木さん、ヤシの木ネックレス装備の小倉さん、内田さん、上田さん、そしてラスボスこと画伯こと小林ゆうさんが登場
「どうも、聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>役のーー」
アンタいきなり何言ってるんだ。神崎先輩、ハナっからボケボケである。


③思い…出した! 名場面トーク
Webでとったアンケートのランキング。夜の部は日常シーンベスト5。

・5位:静乃の浴衣デート(5話)
竹達さん「私この回の静乃のおっぱいがすっごく好きで!!メロンがすごくて!!帯の上に乗ってて!!」
石川プロも交えて盛り上がるおっぱいトーク。コンテの段階でぷるんぷるん揺れていたらしい。力の入れどころを分かっているとしか言いようがない。

・4位:マーヤ&部屋のみんな(11話)
アフレコのときから女子会ムードだったとのこと。
小倉さん「このメンバーで雑魚寝とかしたいなって」
天津さん「このメンバーで雑魚寝したら武道館埋まりますね……」

・3位:サツキラップ(7話)


がんばれYO。
石川プロの返しもアドリブである。悠木さん以外のキャストは「なんで竹達さんは突然ラップを始めたんだ……?」と笑いをこらえるのに必死だったらしい。なんつー現場だ。

・2位:斎子石動アイアンクロー(5話)
小林さん「(中村さん(石動兄役)に頭締めてもらえるのって)あんまりあることじゃないじゃないですか。なんかすごく、UaAuaーーwーWー↑みたいな」
天津向「わからないです!」
小林さん「あ、なんか違ったか。A、chaAaaー^ーwーwWwー↑」
天津向「そういうことじゃないです」
そういう感じの場だったとのこと。どういう感じの場でしょうか。
小林さん「ハイムラァ……わかるよなあ……」
石川プロ「あの、触れないでもらっていいですか!?」

天津向「続いて第1位。内田さん何か、このシーンじゃないかとかありますか?」
内田さん「ヤシの木……」
天津向「なんで蒸し返すんすか……!! 上田さんは!?」
上田さん「2分間続く波……」

・1位:レーシャとデート(猫耳服)(7話)
これは堂々の1位である。

http://warubure-anime.com/product/img/thum/detail_DVD04_cover.jpg

上田さんが4巻ジャケット↑のポーズをとった。……かわいい。うわ、かわいいぞ! 声豚になりそうだ!!
上田さん「だんだんつらくなってきた……」

・ランキング以外で印象に残ったこと
石川プロ「とうもろこしマジで入ってなかったんだなーって」
小林さん「ハイムラァ……いつでも呼んでくれェ……」
石川プロ「ホントにやめてほしい……!」
他、悠木さんがアニメ本編でなくドラマCDの話を始めたりする。11巻限定版についてきたやつだ! 押さえてないクソッ!! 良い宣伝するなあ……

小林さん「選べません……女の子もみんな可愛くて……諸葉さんも……ハイムラァ……あとあの大きいのも(フォートレス級のことか!)。あの瞳がいっぱいあってパチパチって」
天津向「あれですか!?」
小林さん「みんなも好きだよね?」
ぐるりと客席を振り返る小林さん。い、いやいや……同意を求められても困るぞ。観客困惑。
小林さん「敵もすごいしキャラクターもかわいいし、ワルブレ大好きって感じで! せーの、ワルブレ、大好きー!」
えっこっちに振るの!? ノるよ!? 客のみんなで音頭に合わせる。めっちゃ戸惑っとるがな!
でも「ワルブレ大好き! 全体が大好き!」には素直にグッときたりする。


④最強のペアは誰だ! 何を綴っているのでしょ~か!
女性陣が2人1組のペアに分かれ、片方がくじ引きで決めた道具を使って空中にお題の文字を綴り、もう1人が描かれた文字からお題を当てるゲーム。 答えがどうしてもわからない場合は助っ人役・石川プロにジェスチャーヒントを求められる。

というか実質ジェスチャークイズだ……

 4.1 Aチーム(綴る内田さん→答える小倉さん)
道具:例の紐。お題:ロボット。
例の紐とは……1000円の青い、女神が付けてるあれである。レーベルの壁を越えてしまった。
なわとびみたいにひょいひょい綴っていくがやはり紐では難しい。ジェスチャーへ。
間接部が丸くてぎゅるぎゅる回転しているのが伝わってくる! 最新型のヤツだ! 
正解。

 4.2 Bチーム(綴る上田さん→答える竹達さん)
道具:けん玉。お題:やきにく。
どっちが綴るか観客に訊くとレーシャコールが巻き起こり、上田さんが綴ることに。竹達さんに答えさせたいファンの気持ちはよくわかる。エンシェントニワトリ。
竹達さん「わたしちょっと雪辱のハラミ……ハラミ??
竹達さんの言語野がバグった。悠木さん、頭を抱えてとても険しい表情をしてらっしゃる。
混沌とする2人をよそに、上田さんがお題を見ないよう目を伏せる。スクリーンに映し出されるお題は「やきにく」。なんだこの流れは。この会場にいったい何が降りてきているのか。

上田さんは1画綴るたびに「シュッ……シュゥッ……シュッシュッ」と小声で呟く。かわいい人だなあ……
昼の部の反省を生かしたのか、けん玉を振り回さず先端で文字を書くようなスタイル。シュウッ……シュウウッ……
竹達さん「すっごくおいしそうだけどわかんない!」
石川プロ「先輩命令なんだよなあ……」

うおォん! 俺が育てた肉だ!! とばかりのジェスチャー。正解。

4.3 Cチーム(綴る小林さん→答える悠木さん)
道具:ゴルフクラブ(玩具)。お題:ふくろう。
天津向「石川プロが考え込んでおります。けど結果は出す男なんで大丈夫です」

とめはねはらいをしっかりと。綴る小林さん、ナイスショットをきめています。繰り返し、何度も、同じ1文字目、2文字目で。
悠木さん「すごいわかったんですけどー、なんかー……」
天津向「いえ、信じられないかもしれませんがまだ2文字目です」
悠木さん「!?」
天津向この人は1文字目を3回やったんです」
悠木さん「? !? ???!」
小林さん「絶対勝とうね^^」
その後も詰まりながらも文字を進めてラストの4文字目に突入、しゅっと書き上げたその瞬間。

小林さん「う」

静寂した会場でいやにはっきり響く「う」。この人、口で言いやがった……!!! 
場内、大爆笑の渦。やってしまった小林さん、めっちゃ申し訳なさそう。

石川プロのジェスチャーは名演としかいえない。正解。


というわけで2周目へ。
石川プロ「当然のように2周目いくんですね」
天津向「日本で唯一のジェスチャーのプロと聞いております」
……まあ石川プロ、天メソイベントではカラオケをする宇宙人とかジェスチャーする方だからなあ……


 4.4 Aチーム(綴る小倉さん→答える内田さん)
道具:たわし。お題:海水浴。
小倉さん「私たわしってはじめて触ったかも……」
えっまじで!? とどよめく場内。
ヤジ「どんな感じー!?」
小倉さん「思った以上に固くて痛いです……」
ヤジ「「「fooooooooooooo!!!!」」」
ぼく「fooooooooooooo!!!」

だめだこの会場……小倉さんはたわしのにおいをかいでくさがっている。面白すぎる。

たわしによる綴りは空気の壁を磨くよう。お、わかりやすい。直線がきれいだ。
内田さん「わかったけど、やっぱその(海水浴の)空気を味わいたいなーって」
ジェスチャーを開始することに。「よかったらたわしも」と片手にたわしを持たされる石川プロ。無茶振りじゃねーか!
と思いきや石川プロ、数瞬悩んだ後でたわしをビート板にするジェスチャーに移行。巧い……! そして浜辺で追いかけっこする恋人(昼の部のドラゴンと同じく一人二役だ)を演じている。あわただしい。すばらしい。
当たり前みたいに正解。
内田さん「ちょっと最初の空白の時間がよくわからなかったけどー」
石川プロ「これのせいですよ!!」(たわしを突き出す)

4.5 Bチーム(綴る竹達さん→答える上田さん)
道具:指差し棒。お題:一輪車。
竹達さん「よーしつづるぞー」
めっちゃ不安だ……引き当てた道具は指差し棒。大当たりの部類だ。
竹達さん「すごい頭よくできそうですね!」
石川プロ「今の発言頭よくなさそうですね」
さらっと爆弾投げ込むのやめようよ!! 後で絶対怒られるやつだ……プロ……

海水浴と同じく今回も漢字を綴る。画数多いから書くのが大変だ。でも直線をピシっと引いててわかりやすい。『輪』は書きあがった瞬間に拍手と歓声がわきあがる。『車』でもわきあがる。
天津向「これそういうゲームじゃないですから! なんでポイント獲得したみたいになってるんですか!?」
上田さんはあきらかに綴った文字が伝わっている様子。でもジェスチャーはお願いする。
竹達さん「やりたくなるような魔法をかけてあげる! 界人くん、いつやるの?」
石川プロ「今でしょーーーー!!(観念して天を仰ぐ)」

ジェスチャー。単にバランスをとってこぐ(そぶりをする)のみならず、サドルを持ってまたがるところと降りるところの演技が秀逸。なかなかできるものではない。
上田さんもごく自然に正解。

4.6 Cチーム(綴る悠木さん→答える小林さん)
道具:傘。お題:不死鳥。
さっきつかった指差し棒を自分の席へと持ち帰り、内田さんの二の腕をつんつんしはじめる竹達さん。
天津向「竹達さん。指差し棒で遊ぶのはやめてください」

傘(ポーズをとったら歓声がわいた)の先端で漢字の曲線を綴っていく悠木さん。わりとわかる。けど小林さんはわかっていない様子。
うっかり2文字目は「死」だと悠木さんの口がすべっていた気がするがダレも何も聞いていない。
プロー! 助けにきてくれー!! 仕方なく出た石川プロに差し出される傘。どうしろとという面持ちで悠木さんを見返す石川プロ。
傘を開いて閉じてを繰り返してはばたきを、壇上で死んだふりをしては蘇ってで不死を表現するプロ。けどこれはニュアンス的に難しいか?

天津向「それでは小林さん、正解お願いします!」
小林さん「みんな……受け止めてね……死神男!!
どこから出てきたその単語。
小林さん「死はあってますよね!?」
天津向「なんで1文字目に死が入るの答えたんですか!?」
あまりのアレさに再度答えるチャンスが与えられる小林さん。
小林さん「堕天死」
もう何文字目とかツッコむ次元になかった。

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商品は明宝ハム


⑤告知
昼の部の記事で書いたため省略。タオルのほうが完売となっております。
fortunaの4人はライブ準備のために一旦舞台袖に退場。
小林さん「ハイムラァ……」(4人がいなくなったとたんに告知とまったく関係なく絡み始めた)
石川プロ「さりげなく尻触らないでもらえますかね!?」

おい……いつまで寝てる気だ……お前も思い出せ(登録しろ)。
実際まじめに期待してたりする。あわむら先生監修のオリジナルストーリーなんですよ。


⑥ライブ
閉幕を飾るのはもちろんfortunaより『マグナ・イデア』。
中村彼方さんの歌詞*1が、fortunaの歌声が私の世界をブレイクしていく。声豚のコールさえも今となっては心地良い。というか昼の部で覚えてしまった。フゥフゥー↑

「なぜここで出逢ったのかを この時に生まれたのかを 私たち 未だに知らないまま」

まじめな話、この作品と出逢わなければ今の私はいなかった。無論このブログも開設していない。
けっこう冗談抜きで精神が厳しかった時期に突き刺さったのが本作だったのだ。凍えていたメンタルを毎週ブレイクしてくれたのには感謝しかなかったりする。
この生き苦しい世の中で「聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>」は、2015年冬の3ヶ月は、7/12は記憶の中で輝き続けてくれている。原作が続くこれからは、もっとずっとだ。
実際、私は苦しいときこう呟いている。「波乱の現世を切り開け!」と。ネタじゃないんですよこれ……。

もっとも、私のダメンタルとは無関係にこのアニメが怪作であることは以前記事にした通りである。


⑦閉幕
熱狂に包まれた舞台、コメントを残していくキャスト陣。小林さんは神崎先輩の声で奇声をあげる。竹達さんはハムやハラミを蒸し返す。おうちに帰ってお肉食べたいと思いますと。はい。

石川プロ「昼の部は『来いよ、サラティガ!』で〆たんですけど、」
……お?
石川プロ「夜は、僕が『ウィーアーザ』って言うので、」
おおお?
石川プロ「みなさんで『セイヴァーズ!』って言ってもらえます?」

思わず椅子から身を乗り出した。立ち上がりかけた。これは、これは……!!


石川プロ「武器を用意しろ! いくぞ、」


「We are the」

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「 "Saviors"! 」

夢が叶った。感無量である。

 本当、感謝しかない。


・おまけ

イベント限定販売とはなんだったのか。

1ヶ月以上早い先行販売とはなんだったのか。

※ワルブレ展は現在終了しています。

*1:ゆゆゆのOP・EDの歌詞も大好きです。

『TVアニメ「聖剣使いの禁呪詠唱」亜鐘学園学園祭~We are the・夏~』に行ってきた(昼の部)

f:id:n_method:20150714222316j:plain思い…出した! 綴るッ!

7月12日日曜日朝。深夜3時までひとりワルブレ上映会を開いていた私は目覚ましアラームにセットしていた『salatiga』で目を覚ました。変身時のBGMである。
待ちに待った超最強のイベントデー、コンディションは最高潮。ラーメン屋で早めの昼食を食べてから電車に乗って会場に向かう。日曜の虎ノ門、昼営業のお店は少ない。

出足が遅れたため物販状況がやや不安。自然と足早になっていく。
TLを見れば「ワルブレ物販現在行列5000人」「現在8000人」「前世も含めて1万人」「Tシャツタオル限定3点!? 3人しか買えないじゃないか!」「3日分はあるぞ!!」etcetc、超最強の情報戦が繰り広げられている。あまりのウィットに頭がアイスみたいにとろけたところでニッショーホール着。

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700人の《救世主(セイヴァー)》が集う決戦の地。
意識の高い救世主達は既に物販のTシャツに着替え、『綴る!』だの『ぶんぶく茶釜ーーーーー!』だのを誇らしげに上体に貼りつけている。
急いで私も物販に並んだ。10人ちょいだった。

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物販リスト。事前にすべてを告知しないあたりワルブレ公式である。

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イベント限定Tシャツはこちらの2点。他、コキュートスTシャツとサツキ名言Tシャツの計4種類のTシャツがある。

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もうひとつのイベント限定アイテム、思い…出しタオルと、C87イベントセットも含めての計4点を購入。9500円。安い。

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1ヶ月以上早い先行販売の抱き枕。実際静乃エロい。けど世界一可愛い抱き枕ことマーヤがいないのは確定的に間違っている。

f:id:n_method:20150714230238j:plainそんなこんなで開場。ハコ自体がコンパクトなので前ブロックじゃなくても壇上が近い。これはいい。
キャラソンアルバムが流れている中まったりと待つうちに席が埋まり、さらに待っていると諸葉さんのアナウンスが流れ始めた。

「さて……いよいよ亜鐘学園学園祭の開幕だ。まずはこの曲から!『緋ノ糸輪廻ノGEMINI』!」

!?
①開幕ライブ!!?
沸き立つ観衆、真っ赤にライトアップされる壇上、煙の中から現れる花魁姿のプチミレディ! 初っ端からフルスロットルだ!! 声優ファンも熱狂!!! サイリウムが客席を緋色に染め上げる!!!


②キャラクター紹介ムービー
ライブが終わり間をおかずにムービーが流れ出す。BGMは『World Break -Main Theme-』。
「兄様は絶対に負けない。だって、兄様は聖剣の守護者、最強の剣士なんだから!」
「前世も現世も来世も、ずっとずっと一緒にいたい!」
「尻は地球より重い!」などの名台詞のテロップとともにメインキャラクター達がスクリーンに映し出されていき、その度にやはり会場が沸く。
このコーナーが一番アニメらしいコーナーだった。ここからはシンプルに地獄である。

本イベントのMC・天津向が軽い自己紹介を終えた後、メインキャストが登場。
まずは最強の救世主・石川プロこと石川界人(灰村諸葉役)が舞台袖からかっ飛んできた。当たり前みたいに綴るTシャツと思い…出しタオルを身に着けている。ワルブレ過剰摂取で頭がイカれた客と勘違いされてもおかしくない。
引き続き竹達彩奈さん(嵐城サツキ役)、悠木碧さん(漆原静乃役)、小倉唯さん(四門摩耶役)、内田真礼さん(百地春鹿役)、上田麗奈さん(エレーナ・アルシャヴィナ役)、小見川千明さん(アンジェラ・ジョンソン役)と最強のキャスト陣が続々入ってくるが、石川プロの登場に引きづられてポーズ的なものを取らざるを得ない雰囲気に。みなさま大変にかわいい。

悠木さん「本日は竹達が無事にウィーアーザ夏を言えてよかったと思っています」
これ、今となっては半ば誇張抜きの心配だったんじゃないかと思う。

石川プロ「最高の思い出綴っていこう!」


③思い…出した! 名場面トーク
Webでとったアンケートのランキング。ちなみに私はインヤン・ヴリトラ、奪われたくないなら奪うな、コキュートスに投票した。
昼の部はバトルシーンベスト5。

天津向「キャストの皆さんこのバトルが入るんじゃないかとかありますか?」
小見川さん「おっぱいバトルですか?」
天津向「……えーっと、どうされましたか?」

・5位:諸葉VSエドワード(4話)
羽多野渉さん(エドワード役)のアドリブが光った回とのこと。チャラ~もダッダン!も全部アドリブとか……すごいな。
石川プロ曰く、この作品はアドリブやセリフのニュアンスで遊んだ場面が数多くあるらしい。件のラップもだ。
竹達さん「プロ・フィット*1の2人に煽られた」
石川プロ「だって韻踏んでたし」
悠木さん「韻踏んでたし、ねえ?」

・4位:サツキVSソフィ(8話)
竹達さん「お、思い…思い…」
天津向「思い出してください! 今この場で語れるのはあなたしかいないんですよ!!」
竹達さん「俺の屍を越えてゆけって感じだった、なんか」
……お、おう(この人大丈夫か……?)。

・3位:百地VS諸葉(5話)

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天津向が海回で他に印象に残っていることをキャストに尋ねる。
なぜかシームレスに諸葉の尻の話が始まる。
天津向「神崎さん……夜の部で降臨されます」
石川プロ「来ちゃうんだよなあ……そうだ、テストのときはもっとリアルなあえぎ声でやってたんですよ。あっ……ァアッ↑」
悠木さん「やめなさい!!!!」
ちなみにもっと生々しさを抑えて、という監督の指導もあったらしい。

・2位:静乃VSレーシャ(7話)
上田さん「なんか静乃さん攻めてると楽しくなってきちゃって。なんかぞくぞくするーって」
悠木さん「私が右? 私が右か、わかった」
ナンの話だ。
ちなみにこのバトル、最初のアフレコでは静乃が殺る気出しすぎでドスが効いてしまったので、もう少し抑えめで、と監督にお願いされたらしい。……もしかしてキャスト陣、しばしば演技を抑えるようにお願いされていたのではないか……?

天津向「続いて第1位。……先に言っておきますがそれ(=おっぱいシーン)は違います」
小見川さん「じゃあなんなんですか!?」
天津向「バトルシーンだよ!!!!」

・1位:諸葉VS多頭種(2話)
「ヤシの木……」
「ヤシの木の回!」
「ヤシの木は忘れよう」
突然のヤシの木トーク。
小倉さん「実は今日の衣装にヤシの木のネックレス(¥300)を買ったんですよ。夜の部に付けてきたいと思います」
や、ヤシの木以外には?
「諸葉が横スクロールみたいに動いてた」
だからそのピンポイントな表現をやめて!!!

・ランキング以外で印象に残ったこと
内田さんからは弟(内田雄馬:万年堂亀吉役)のアフレコをドキドキしながら見守っていたこと、小倉さんからは最終話でやっと綴れて嬉しかったです!(やたらかわいい)というのが挙がった。
なんと綴る用の分厚い台本があったらしい。


④最強のペアは誰だ!何を綴っているのでしょ~か!
女性陣が2人1組のペアに分かれ、片方がくじ引きで決めた道具を使って空中にお題の文字を綴り、もう1人が描かれた文字からお題を当てるゲーム。
答えがどうしてもわからない場合は助っ人役・石川プロにジェスチャーヒントを求められる。

4.1 Aチーム(綴る内田さん→答える悠木さん)
道具:指差し棒。お題:スイカ。
スッ、スーッと小声で言いながら(かわいい)内田さんが『スイカ』の3文字を中空に綴っていく。お、わかりやすいぞこれ。
しかし悠木さん「わかったけどー、わかんな~い☆」と石川プロにジェスチャーを要求。ひでえ。
石川プロが颯爽と参上、スイカ割りのジェスチャーを始める。額で棒を地面に押さえてその場でぐるぐる回った後、見えないスイカを一刀両断。ますますわかりやすい。
Aチーム、難なく正解。

4.2 Bチーム(綴る竹達さん→答える小倉さん)
道具:ペンライト。お題:おふろ。
サイリウムとかではない本物のペンサイズのライト。とりあえず点灯させる竹達さん。観客に向けるのは眩しいから、と指摘され、ぱっと自分の顔に向ける竹達さん。「眩しっ!」。当たり前である。こ、この人は……

竹達さんが綴った結果はわかるようなわからないような……やはりジェスチャーへ移行。
石川プロ、服に手をかけぐいっと脱ぐ……ふりをする。つま先からゆっくり湯船に浸る。リラックス。ふ~……すごいいけないものを見ている気がする。とんだサービスシーンだ。
Bチームも正解。

4.3 Cチーム(綴る上田さん→答える小見川さん)
道具:けん玉。お題:ゴリラ。
けん玉、リハであおちゃん(悠木さん)が悲惨なことになった曰くつきの道具らしい。
悠木さんでも乗ったから
石川プロ「いや知らないよ! 先輩だけど! 乗せるゲームじゃないから!」
悠木さん「でも乗ったもん……」

けん玉で綴るのは無理でした……そりゃそうだ。どうしようもなくジェスチャーへ。
石川プロ、深呼吸をして、何かを捨てるような表情を浮かべて……う、う○こを投げ始めた!! 習性か……ひどくリアルだ。小刻みなドラミングもそれっぽい。

Cチームもなんとか正解。
全チーム並んでしまった。ジェスチャーの質が高すぎる。


というわけで2周目。マジで?


4.4 Aチーム(悠木さん→内田さん)
道具:ゴルフクラブ(玩具)。お題:イギリス。
綴り自体はイイカンジ。でもジェスチャーはやらせる。
石川プロ、英国紳士を演じています。杖をついて、席を譲るようなしぐさ。しかしだいぶ伝わりにくい。内田さんが困惑している。
内田さん「ジェスチャーは忘れる!」
石川プロ「えぇっ……!」

正解。石川プロとはなんだったのか。

4.5 Bチーム(小倉さん→竹達さん)
道具:紐。お題:ドラゴン。
天津向「例の紐ではございません」
小倉さんは紐を振り回して軌跡を描くのではなく、紐で文字の形を象って表現していくスタイルを採用。しかし竹達さんには伝わらない。
ジェスチャータイム。ドラゴンはばたく。火を吐く。 勇者(勇者役も当然石川プロがやる)が剣で防御する。飛びかかって斬る。 ドラゴンやられる。
……これまた巧いなあ。ジェスチャーというより演技だ。
しかし竹達さん、最後までピンとこない。

天津向「この作品にも出ています……4文字。竹達さん、お願いします!」
竹達さん「ニワトリ!」
天津向「ニワトリが何を吐きますか!!」
竹達さん「タ、タマゴ……?」

不正解。さすがに笑い死にかけた……
間違った後もヒントは続く。炎を吐いていた、この作品にも出ている、ばっさり斬られる、エンシェント、といったヒントが次々口頭で出されていく。
石川プロ「インヤン・ヴリトラアアアアアアアアアア!!」
竹達さん「……??」
悠木さん「思い…出して!」
石川プロ「みんな、ありがとう! うおおおおおおおおおああああああ!!!」
竹達さん「…………???」
石川プロ「思い出せよおおサツキイイイイイイイイイイ!!!!!」

竹達さんは天津向さんの最後のヒント「最初の3文字は『どらご』です」のヒントでようやく正解に至った。

4.6 Cチーム(小見川さん→上田さん)
道具:傘。お題:えだまめ。
小見川さん、他チームの小倉さんを召還して二人羽織の様相で綴り始める。ナチュラルにルールを無視していてかっこいい。あとかわいい。
上田さんへの口頭でのヒント(まだ何も答えてないのに小見川さんが勝手に伝え始めた)は『小倉さんが好きな食べ物』。どんどんルールが追加されていく……つよい……

それにつけてもプロのジェスチャー。 枝豆をくわえて皮を置く。ビールを追加。枝豆注文。パクつく。やっぱり巧い。 正解。

結果はA、Cチームの優勝。

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賞品は明宝ハム
石川プロ「ちょっと待って、俺あんなにがんばったのになんもないの……?」


⑤告知
物販情報、BD/DVD、キャラクターソングアルバム、原作新刊13巻(8月発売)等の紹介・告知。
先日発売された超最強のキャラソンアルバム、放送前に発売されたイメージソングミニアルバムの曲まで入った大満足の19曲収録なので本当にオススメです。
放送情報としてはリテイク版*2の放送がAT-Xで始まっている。dアニメストア、ニコニコ、バンダイチャンネルでも開始するらしい。絶対観よう。


続いて公式スマホアプリ『スクール・オブ・セイヴァーズ』のトレーラー告知。

俺は思い出した。お前も思い出せ。
絶対みんなで《救世主(セイヴァー)》になろうな。


⑥ライブ
閉幕を飾るのはfortunaよりエンディングテーマ『マグナ・イデア』。
声優ファンのコールがすごい。こちらもつられてオカしくなる。
そうだ、夏になれ。俺たちが夏だ。We are the "Natsu"!


⑦閉幕
アガりきった舞台にキャストが再登場し、一言ずつコメントを残していく。
イベントの〆は石川プロのこのかけ声。

石川プロ「来いよ、」
観客サラティガアアアアア!!!」

熱気渦巻く会場に救世主達の絶叫がこだまし、イベントは一度幕を閉じる。




ーーそして、夜の部が始まるのです。(夜の部の記事につづく)

*1:声優事務所。本作キャストでは悠木碧石川界人の2人が所属している。

*2:円盤収録の修正版。TV放映版よりぐんとグレードアップしている。

夜空の星を結ぶ魔法 ~放課後のプレアデス読解・感想~

「寄り添うように輝く星も、本当はひとつひとつが何光年も遠く遠く離れています。何もない空でひとり輝きながら、みんな、同じように星達を見上げているのかもしれません。その輝きが、いつか誰かに伝わるって信じながら」

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SUBARU×GAINAXの共同アニメーション作品『放課後のプレアデス』が先日最終回を迎えた。言うまでもないが多くの視聴者同様、私は感動し、感動し、感動しきり、今なお心身が前後不覚に陥っている。毎話こんな感じだったが今回は特にひどい。どうにかアウトプットしないと心がおかしくなりそうなのでここにキーボードをとった次第である。
今回はこの史上稀に見る傑作(私の中ではもはや宇宙最高傑作)について、散りばめられた幾つかの謎に関する私見・こじつけをがっつり交えつつ、好き勝手に書き散らしていきたいと思う。


・可能性の結晶が持つ意志

放課後の魔法使いとしてエンジンのカケラを集める日々を通し、すばる達5人は自身のトラウマを克服してきた。ひかるは真実を知ること、いつきは自分を伝えること、あおいは誰かが変わっていくこと、ななこはいつか別れてしまうこと。各々の不安や悲しみ、自己否定は、すばるやみんなの言葉で得られた気付き、そこから選んだ自分自身の行動によって、どこまでも優しく取り払われる。
本作の「横の物語」はこの5人のつながりといえるだろう。
そして「縦の物語」に該当するのがすばるとみなとのつながりだ。
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「それにこの星も、君のことが好きみたいだよ」

幼い頃、夢か現かわからない世界で、ふたりは星の交換をした。
みなとはこの世に生まれることすらなかった命の可能性の結晶を、すばるは母と作った折り紙の星を。
序盤でしばしば温室みなとが語る「星が君を導く」とは、この結晶を指していると思われる。星の交換がなければふたりは再会することもなく、物語も始まらなかった。温室みなとは深い眠りについたまま、角マントも呪いの形のままだったかもしれない。コスプレ研究会のみんながトラウマを払拭できたかも怪しいところだ。すばるは温室みなとと交わした言葉に背中を押されて、友達を助けてきたのだから。
では、なぜ可能性の結晶はすばるを導いたのだろうか。
それはきっと、すばる達を応援しているからだ。
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6話においてドライブシャフトは突然の進化を見せる。
初見では意味不明(!)だったこの描写も、10話で花の正体がみなとの集めた可能性の結晶だとわかってからはすんなり理解できるようになる。
すばるの祈りを見たつぼみの花=結晶達は、自ら咲くことを選択した。おそらく自身の姿を確定させることで、弾き出される可能性のエネルギーをすばる達に渡したのだろう。
エンジンのカケラの方はわからないが*1、可能性の結晶達には明確な意志が感じられる。一度人の心に宿ってから弾き出された彼らが、変わりたいと願うすばる達を応援するのはとても自然な感情に思える。すばる達が友達を応援し続けたのと同じだ。
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たった一輪を残して、咲いた花はすべて消えてしまう。

……これも推測だが、角マントも結晶のエネルギーを借りて魔法を使っていたのではないだろうか。*2
自分をやり直すために、自分と似た境遇にある可能性の結晶を助けるために、救いたい対象自体を削りながらエンジンのカケラを追い求めたのではないか。
だとすればその覚悟、心情は計り知れない。みなとがすばる達のモラトリアムじみたカケラ集めを唾棄するのも道理といえる。


・観測するということ

魔法使いのエネルギー=可能性の力は何者でもない人間に宿る。大人のように自分の在り方を規定した者はエネルギーを失い(弾き出されて)、魔法使いではいられなくなる。
「自分は魔法使いだ」と自認したみなととすばるが魔法を失うのはこのためだ。皮肉ではあるが。
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「君だって僕と同じ……自分を呪っている」
「え?」
「心のどこかで君は、このままカケラ集めが終わらなければいいと、本当はそう願ってるんじゃないのか? それが、君自身への呪いだ」

そして、今の自分を否定すると、魔法は呪いへと変わる。

エンジンのカケラを集める活動自体を目的化していること。
変わりたいという自身への願いを、本心では否定してしまっていること。
心の奥底にある「今のままでいたい」という想いをみなとに指摘されたすばるは、自分の呪いを自覚する。
呪いとは自己を否定し、希望を奪う鎖である。
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「私だって信じてる。会長がどう言ったって、すばるは変われるって!」

胸に星を宿せなくなったすばるを最初に後押しするのはあおいだ。7話で「私達は変わっていける」と自分を、相手を信じられたから、あおいはすばるに断言する。

しかし、あおいはすばるの眼前から忽然と姿を消してしまう。
夕焼け空を見上げても、ドライブシャフトは目に映らない。
魔法の世界から弾き出されたすばるは、ふらふらと庭園を彷徨う。手入れがなかったことにされている雑草だらけの花壇を前に、もはや途方に暮れるしかない。
ここですばるの背中を押す、きわめて意外な2人目の人物が現れる。
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みなとの友人(以下梶君)!

「ほら、よくここであいつと一緒にいたろ?」
「あいつって?」
「ほら、うちのクラスのさー、いつもぼやっとしたあいつだよー。えっとー……あれ、おっかしいな……名前が出てこない……」

思いもよらない遠くの星が、同じようにみなとを観測していた。
自分と同様、魔法使いではない人が、である。
梶君の言葉を受けて、すばるは確かにみなとが此処にいたこと、なかったことになっていないことを再び信じられるようになる。
雑草が生えしきった花壇からあの花を見つけ出せたのは梶君のおかげだ。梶君は間違いなく本作の影のMVP。ありがとう梶君。
……まじめな話、ここですばるが「他人」に救われたという事実は、本作のメッセージ、ひいてはラストのすばるの台詞にも多大に関わっていると思う。
だいたい「みなとの友人」(実際キャストにこう表示される)というのがよく考えてみると重い。梶君の一方的な友達認定だとしても、みなとにはまだ観測者がいてくれたということなのだから。

ナナオレの自販機から見事いちご牛乳を引き出したすばるは、今度は消えたみなとへの扉を開こうと天文部室の入り口であがく。しかし魔法が使えないのは変わらない。そして過去にみなとがいたことが分かっても、今いない事実に変わりはない。
みなとは本当にいなくなってしまったのか。諦めかけたすばるの前に3人目の助けが現れる。胸に宿るもうひとつの星、可能性の結晶だ。すばるに魔法のエネルギーを貸して、ここでも彼女を導いてくれる。
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扉を開き、病に伏せる真実のみなとを知るすばる。
植物状態のみなとの手の下には、かつて交換した折り紙の星が置かれていた。みなとが存在を信じられなくなり消えていた折り紙の星は、すばるの意志、観測によって再びその形を結ぶ。
真実のみなとは今も、幻だったかもしれないすばるのことを想っている。すばるもまた、幻だったかもしれないみなとを想い続けてここまで来た。

「ほらね。みなと君も私も、幻なんかじゃないよ」
互いが想っているのならば、それが幻であるはずがない。


・十字の星と五芒星

魔法使いが宿す胸(黒すばるのみ頭部)の星は、彼女達の可能性そのものである。
何者でもない、故になんにでもなれる放課後の魔法使い達は、胸に十字の星を宿す。
角マントは自身に可能性がないことを理解してしまい、胸の星を失っている。
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黒すばるはすでに何者かになった後で、なお変わろうとする意志・希望を持つことで、頭上に光なき星を宿す。ダークエネルギー同様、既存の科学では観測しえないが、確かにそこにある可能性。星の持つ引力ではなく、斥力……離れる力を持つ何か。「まったく新しい魔法」。
(ちなみに、すでに何者かになったすばるのコスチュームは角マント同様、無垢な白から何色にも染まらない黒に変わっているが、自分を否定してはいないので呪われているわけではない)

何者かでありながら、再び何者かになれる≒変われる可能性を宿す「まったく新しい魔法」とは、こじつけるなら「変わること」を自己の在り方として規定し直すことなのかもしれない。
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そして白みなとは可能性の結晶から生まれた、星型の星を宿す。
本来、魔法使いのコスチュームに星型は宿らない。宿るのは個の光、十字に伸びる光点の星だけである。みなとの胸の星だけが唯一の例外として描かれる。
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五芒星という形は他者との間に象られる。
夜空に星型の星が存在しないのと同じだ。星型は所謂パブリックイメージであり、現実の星がそのような形をしているわけではない。人同士の認識の間にのみ、星型は存在する。*3
みなとの星が星型なのも、それが他者とのつながりによって生まれたからではないかと思うのだ。無論、他者とはすばるのことである。すばるに貰った折り紙の星がみなとにとっての淡い希望=可能性だった、と考えてみても面白い。

衣装に白さを取り戻し、ピアスの色も赤から黄色に変わったみなと。さながら寿命を迎えたベテルギウス超新星爆発を迎え、新たな星に生まれ変わったようでもある……が、この衣装は胸に星型を宿す一方で(ピアスを除いて)十字の星を一切宿していない。星がキラキラと目に眩しいすばる達のコスチュームに比べると非常に淡白な印象を受ける。
ともすればこのみなとは、角マント以上に個としての可能性を持っていないのかもしれない。
この『放課後の世界』では既に滅びてしまったみなとに、この世に生まれなかった命の可能性とすばるの観測が与えた、一時ばかりの仮初の姿。それが白みなとなのかも。


・本当の魔法

「君達のおかげで僕達は新しい可能性を探す旅に出られる。宇宙の理を越えてまで、君達はエンジンのカケラを集めきったんだ! これこそが本当の魔法だよ!」

11話でちゃっかり暴露されていたが、プレアデス星人の魔法は科学に等しい。任意に可能性を選べるという技術は、言い換えれば「できることしかできない」。正しくSFの枠内といえる。

「ファンタジーは現実で存在しない、また存在しえない事柄を扱い、SFは現実に存在しうる、また将来いつか存在するようになるだろう事柄を扱い、つねに論理の領域内にある可能性に限定される」
(『天使と宇宙船』 フレデリック・ブラウン)

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本作において並行世界はそれぞれが独立しつつ、同時に重ね合わせの世界としても扱われる。
特に6人の運命線が複雑に絡まりあった『放課後の世界』では、意志こそが世界を収斂し、事象を確定する鍵となる。
「この宇宙のおかげなんかじゃない。全部私達が、自分の意志と自分の力でやったことだよ!」
という、11話でのひかるの言葉は圧倒的に正しい。
重なり合っている世界を、求めるひとつに収斂させるもの。
エンジンのカケラを集めきれたのも、バナナオレの自販機からいちご牛乳を引き出せたのも、すべては強い意志が世界を引き寄せたからだ。

そして意志とは、他者によって引き出されるものでもある。

他者とのふれあいによって、今まで閉じていた可能性が開きうるということ。
すばるがあおい達の鎖を解き放ったように。みなとと交換した星がすばるを導き続けたように。可能性の結晶達がドライブシャフトを進化させたように。梶君がすばるの観測を後押ししたように。すばるとみなとに魔法が戻ってきたように。
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(すばるに可能性を開かれてきたコスプレ研究会の4人が、文化祭の出し物において自分達が仮装するのではなく、客を仮装させる=可能性を開くのも印象的に映る)

人と人との間で紡がれる関係、その結果生じる確率・可能性の相互作用こそが、プレアデス星人でさえ予測することのできない、宇宙の理*4を越える「本当の魔法」を生む力だ。

この「本当の魔法」は『放課後の世界』特有のものではない。
いきなり飛躍するが、彼女達がしてきたことは言ってしまえば天体観測だ。1話・最終話での星を人に見立てたすばるのモノローグが表す通り、彼女達の……いや、すべての人間関係は、星空の模様と近似である。
現実には存在しない五芒星を結ぶことは、実在しない形を思い描き、夜空に星座を観測する行為と一致する。

そしてその星型は、相手が相手、自分が自分だったから結ぶことができたのだ。
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「みんなを羨ましく思うのはきっと、困ったとき、落ち込んだとき、たくさん助けてもらったから」
「完璧な誰かになりたいってことじゃなくて」
「みんながみんなだったから」
「私が私だったから」
「一緒にいられたあの時間」
「だったら、私は私がいい。そしてそのとき傍にいる人の、きれいなところ、いいところを、たくさん見つけてあげたい」

「私は、私になる」

気付きを得た彼女達はただ単に元の世界へと「戻る」のではなく、自分の意志で元の世界を選んで「行く」。

星はいつだって離れ離れで、人も結局ひとりなのかもしれない。
けれど、自分と相手を肯定できたなら、星空を想うことができたなら、きっと孤独にはならない。傍で一緒にいる人と、一緒ではない遠くの誰かと、想いをずっとつなげていける。もしも巡り逢えたのなら、互いの可能性を開いていくことだってできる。
星々のつながりーー星座を結ぶのは、人の意志だ。
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気付いたすばるが抱く祈りに、もう悲しみの色はない。
雨だったはずの流星雨の夜は晴天に変わり、空には星が降り注ぐ。

「夜空に浮かぶ星達は、ひとりぼっちの寂しさと、巡り逢う喜びを繰り返して、長い時の中をすれ違っていきます。
今日の予報は流星雨。星空を見上げていると、今はまだ出逢えていないどこかの誰かのことを、ふと思ってしまいます。
その誰かも、同じようにこの星空を見上げていて。
星達は空から、そんな私達の姿を、見守っていてくれるはずです」

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「待っててね!」
すばるの言葉は、まだ出逢えていないすべての人への、いっぱいの希望だ。


・全話通しての雑感

1話、バス停のあおいを遠くから見つめるシーンで一気に心を掴まれていた。叙情性に満ちた作品が好きだ。ポエムなんかもう大好物だ。心のチャンネルをリリカルに合わせたところで描かれるのは、2話でのすばる・あおいのカケラキャッチ。ふたりの距離感と映像がシンクロしているさま。ここで私は完全にノックアウトされてしまった。
カケラ集めの目的が会長の宇宙船を直すため、というのがピンとこない瞬間もあったが、しばらく観ているうちに、これは彼女達自身が抱える問題と大目的を切り離すことで「一緒に何かを達成したい」という彼女達のシンプルな想いを強調するためだとわかった。これは世界を救うだとかではない、あくまでささやかな少女達のお話なのだ。
そんなミクロな物語を描くために、国立天文台の協力を得ての考証を重ねているのもすごい。色んな意味でおそろしく贅沢な世界の使い方だと思うし、映像面でもこれ以上のスケールの作品は今後そう出てこないだろう。先に物語を作ってから当てはまる宇宙の現象を探したのか、宇宙の現象をもとに物語を作っていったのかはわからないが、各キャラクターの個別回は、もとい個別回も、ひとつのハズレ回もない傑作中の傑作である。本筋やテーマとリンクしているのがまた素晴らしい。YouTube版からの4年間でどれほど徹底的に練りこんだのだろうか。
本作は単に科学・天文学方面での考証が重ねられているから良いのではない。重ねた考証を物語と接続し、見事に一体化しているからこそ、こうも魅力的に映るのだ。
ダイナミックな宇宙の情景と少女の心象を重ね合わせる手法には宮沢賢治を感じたりもする。心を直接揺さぶられるような感覚は文字通りの「感動」だった。これが映像媒体の力かと感服した。毎回私の精神が崩壊しそうだったというのは誇張のない本当の話だ。
個別回があまりに良かったため、9話以降の「縦の物語」に不安を覚えたりもしたが、それもまったくの杞憂だったのは上につらつら書き殴ったことからお分かり頂けると思う。10話で少年の一人称視点が飛び出してきたときなんかはもうね……

放課後のプレアデス』はSFと魔法と少年少女の心にどこまでも誠実な傑作ジュブナイルアニメだった。
6月末からは学研から児童書、8月にはSF作家・菅浩江先生がみなと視点(!)の小説を刊行されるが、どういったジャンル・枠組みにおいても通用するパワーが本作には詰まっている。
他の刊行書籍も含めて楽しみに待ちたい。Febri Vol29*5も素晴らしかった。放課後のプレアデス……ガイナックス最後の光……


おわり。
星を想って生きていきたい。

*1:10話で角マントを刺し貫いているあたりに何らかの意図は伺える。

*2:最終回においてみなとの持つ可能性の結晶の数が減っていたことが示されている。

*3:十字光の星も現実にあるわけではないのだけれど、ここはフィクションレベルが違うということでひとつ……スバルのエンブレムですし……。

*4:宇宙の理には光速の壁などといった物理的側面と、自分ひとりでは越えられないような精神的側面(例えばずっと魔法使いでいたい、というような)があると思う。

*5:一迅社発行の美少女キャラクター・ビジュアル情報誌。29号は放課後のプレアデス特集。佐伯監督および協力された国立天文台教授へのインタビューと第10話までのコメント付き各話解説などが掲載されている。

変わらないものを見つけるために ~放課後のプレアデス第7話『タカラモノフタツ 或いは イチゴノカオリ』読解~

放課後のプレアデスを観ていると毎週精神が崩壊寸前までいくのだけれど、今回またしても最高に過ぎるやつで文が長くなってしまったのでたまにはこちらに書く。


・あおいがすばるに覚える不安

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「あおいならすばるのことなんでもわかると思ってたよ」
「……そんなわけないよ」
「すばるちゃん、なんだか変わったみたい」

2話以降、あおいは目の前のすばるが自分の知るすばるなのだと盲目的に信じてきた。しかし、6話ですばるが自分を守ろうとしたこと、何も言わずに突然園芸部に入ってしまったことを受けて、再び不安を覚えはじめる。

2話ラストで、あおいはすばるにこう告げた。
「今度またあいつが来ても、すばるは私が守る」
この言葉が表すように、あおいの知るすばるとは、自分が守ってやらねばならない弱々しい存在、庇護対象に他ならない。
6話のときのように、自分を守るために体を張る強い存在などではない。

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あおいはすばるを元気づけるのに加えて、すばるが自分の思い描くすばるであること、変わっていないことを確かめるために、以前(2話)それを確認できたいちご牛乳を手渡す。
そして昔のように、ぽんとすばるの頭に手を置く。
「一緒に探すからさ、ひとりで抱え込むなよ」

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みなとのことを話すうちに泣き出してしまうすばる。その姿を見て、あおいは自身の思いを吐き出してしまう。
「すばる……なんで黙ってたんだよ。言ってくれたらよかったのに」

今度は1話の序盤を思い返してみたい。
バス停近くで友人と喋る「元の世界のあおい」に、すばるは声をかけられなかった。もしきちんとしたお別れをできていたなら、ひょっとしたら声をかけられたかもしれない。少なくとも、あんなにも切ない光景にはならなかっただろう。
境遇はあおいも同じだ。
彼女たちふたりは別れてしまった事実と同じくらいに、別れを選んだ理由を伝えてもらえなかったことに対して、強い痛みを感じている。
過去に横たわるその痛みは、お互いを確かめあえた2話以降もずっと棚上げにされたままだ。決してなかったことにはされていない。

そうして今もまたあおいは、園芸部に入ることも、みなとの件も伝えてもらえなかった。
蘇る痛みに耐え切れず、あおいはその場を逃げ出してしまう。

行き着いた先、校内で、あおいはひとり自分を責める。
「変わりたいって思ったんだ。だからここにいるはずなのに。結局同じことを繰り返してる」
あおいの自己嫌悪は、黙っていたすばるに怒ってしまったからだろうか。
それとも、すばるの成長を認められない、小さな自分への憤りか。

変わっていくすばると変われない自分を見比べて、「すばるは本当に私の知るすばるなのか」「またひとり置いてかれてしまうのではないか」というあおいの不安は、いっそう大きく膨らんでいく。

f:id:n_method:20150523173032j:plain「この学校に温室はないよ」
一方ですばるは、転校生の園芸部員となったみなとと再会を果たす。
しかしみなとは、さながら初対面の人間のようにすばると接する。今のところ理由は不明だが、以前と同じみなとであるという確証を、すばるに持たせようとしない。


・彗星と太陽

f:id:n_method:20150523173326j:plain「なぜこのカケラがこうして彗星の中に取り込まれているのか」
ガス惑星を突き抜けるとかしたせいで凍ってしまったのでは、と会長。
5話においていつきの自戒が土星の輪で表されたように、このカケラを覆う氷はすばるとあおいの今の関係を暗喩する。
彗星ーー大切なものを覆ってしまった現実の塊ーーに力ずくで背中を押され、前に進めばいいのか後ろに戻ればいいのか、わからないままに時間は過ぎて、5人は太陽へと落ちていく。

f:id:n_method:20150523173537j:plain燃え盛るプロミネンス。一旦の離脱。現れる角マント。
バランスを崩したあおいの手をとるすばる。あおいはその手を振り払ってしまう。『自分を支えるすばる』という構図を、その変化を認められない。
「……ごめん」
目を逸らしながら、あおいはすばるに懺悔する。
「自分でもわかってる。このままじゃダメだって。……変わりたいって思ってるのに」
あおいの言葉に顔を歪ませ、すばるは答える。
「私だって!」

すばるとあおいは1話でのように、どうして自分を置いていったのかを互いに問いかけあいながら、カケラに向かって飛んでいく。
無論ふたりとも答えられない。行き場のない感情をぶつけあうことしかできない。
思い出されるのは、別れる前にふたりで歩いた、初めての雪の日のこと。

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「本当は私のこと、ずっと足手まといだったのかなって思って。でも、怖くて訊けなかった」

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「ずっとすばるを助けてたつもりだったけど、ただのひとりよがりだったんじゃないかって、何度も思った」

そしてふたりは同時に気付く。
「私たちは置いていかれたほうなんだよ。だからふたりとも、答えを持ってないんだよね」
すばるの目から涙がこぼれる。炎が2人をさえぎる。
「私たち、一緒にいたかっただけなのに。ここでせっかく会えたのに」

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「ばかすばる! ここまできて迷うことなんてあるのか!」
「ふたりならわかってるはずだわ!」
「寄り添う気持ちで運気上昇」

今、ふたりがお互いを大切に想っているということ。
かつて別れた事実があっても、目の前の彼女が別の世界の彼女であっても、それだけは確かなことだ。
3人の言葉に背中を押されて、すばるは涙を拭う。
「行かなきゃ……行こうよ、あおいちゃん!」
「うん!」

降り積もった雪、彗星の氷が覆い隠した『大切なもの』を、熱い感情の発露と太陽の炎が剥き出しにする。ダイナミックな宇宙の情景ときめ細かい心理描写をシンクロさせた、いかにも本作らしい表現といえるだろう。詩情に満ちた鮮やかな流れが否応なく心に残る。
眼下で噴き盛るプロミネンスを眺めて、あおいはぽつりとこう漏らす。

「まるで炎の上を跳ねてるみたいだ」



・変わる関係、変わらないもの

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角マントの攻撃によろめくすばる。今度はあおいがすばるの手を取る。
ぎゅっと軽く手を握り返すすばると、はっとするあおい。すばるとあおいは目で通じあう。
そしてあおいは手を離す。守らなければと思っていた、その相手の手を。

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『もう離しても大丈夫だよ』という、すばるの想いが聴こえてくるようなシーンだ。
すばるはもう守るべき対象ではない。ともに戦い、守り守られる、対等な親友なのだ。ついに理解したあおいは、すばるにこう問いかける。お前なら当然できるだろ、と、気軽に確認するように。
「すばる、飛べるよな?」
「うん!」

並んでカケラへと向かいながら、ふたりは同じ日の過去を思い出していた。
小学六年生のとき、キーホルダーをなくしたすばるの頭に、あおいは優しく手を置いた。
まだすばるが守られるばかりだった頃のことだ。

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あおいの世界では、キーホルダーを見つけたあおいは、すばるにそれをプレゼントされる。
「いつでも、どこにいても、すばるがどんなに変わっても。変わらない大切なものは、ちゃんとここにある」

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すばるの世界では、すばるはキーホルダーをもうなくさないことを誓った。
「いつだってあおいちゃんは私を助けてくれる。だから私も変わらなきゃ。いつかあおいちゃんを守れるくらいに」

それぞれの過去と想いを胸に、ふたりは信じる。
「私たちは変わっていける」

互いが抱いたその想いは、小学校の頃、すでに相手から受け取っていたものだ。
離れ離れになって、知らない間にお互い成長して、変わってしまった世界の中で、ふたりは再びそれを見つけ出した。
だからふたりは、変わっていけると信じられる。

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プロミネンスにかかったカケラをキーホルダーと重ね合わせて、ふたりは穏やかに言葉を交わす。
「すばるに助けられてばかりじゃいられないからな」
「私だって! あ、でも、あおいちゃんと一緒にいるのはずっと好きだよ」

この、文面だけ見るとまったく脈絡のないすばるの返答。
変わらないものを見つけたすばるの言葉の、なんて頼もしいことだろうか……!
あおいに助けられるばかりの、今まで通りの自分でなくなってしまっても。
逆にあおいを助けられるような、強い自分に成長した後でも。
自分はあおいとずっと一緒にいたいんだよ、と。すばるはそう告げている。

その言葉はきっと、あおいが一番ほしかった言葉だ。

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すばるの頭に伸ばした手を、あおいはそっと引っ込める。
あおいがすばるの頭に手を置くのは、それが昔からのふるまいだからだ。守られるすばると守るあおい。変わらぬ関係を象徴するその行為に安心していたのは、何もすばるだけではない。いちご牛乳を差し出したのと同じ意味合いの行動といえる。
しかし、あおいはそんな安寧から決別する……いや、わざわざ確認する必要がなくなったと言ったほうが正しいだろう。

「どこにいてもどんなに変わっても。すばるはすばるだし私は私だ」

あおいは、自分の知らないところで成長した、変わった幼馴染を認める。
同時に、すばるの内側に変わらないものがあることを確信している。これからすばるがどんどん変わっていっても、それだけは変わらないと固く、強く信じている。
もうあおいに不安はない。

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「そうだよね」
それはもちろん、すばるも同じで。


今回の話はすばるとあおいが絆を確かめあうという一点において、一見2話の焼き直しに見えるかもしれない。しかし、その根底では「変化」に対する正反対のアプローチがなされている。
2話は相手が自分の知っている相手であること、変わっていないことを、いちご牛乳や星めぐりの歌で確かめる物語だった。
一方で今回の7話は、相手が変わってしまうことを恐れずに受け入れる、受容と肯定の物語といえるだろう。
スタート地点に立つための2話と、そこから踏み出すための7話。
「変わる」とは「変わらない」とは一体どういうことなのか。ふたつのプロセスを経て描き出した本作の緻密さ、丁寧さには脱帽するしかない。


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いつきたち3人と別れた後、すばるはキーホルダーの件を切り出す。
取り出したキーホルダーは寸分違わず同じものだった。持ち続けてきた大切なものは、どちらも間違いなく本物だ。
なぜすばるの世界ではすばるが、あおいの世界ではあおいがキーホルダーを持つことになったのか。
その理由にふたりは、やはり同時に気付く。

「私たち、置いていかれたわけじゃないんだ」
「そうだよ、私たちふたりとも、大切な友達から宝物をもらったんだよ」

都合の良い、当人たちにとって気持ちの良い解釈だろう。
けれどそれで正しいのである。ふたりがそう信じているなら、その「答え」が間違いであるはずがない。

目の前の相手とは違う、もうひとりの相手を、お互いに信じられるということ。
なぜなら目の前の相手が、自分を好きでいてくれたから。自分も相手が大好きだから。
それをもう一度、ここで確かめあえたから。

……はたから見て、間違っていると思えるだろうか?


・今一度、いちごの香り

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「あと、これ! 好きだよね!?」
失ったかもしれないものを本当に失わないために、すばるは再びみなとへ向かう。
いちご牛乳を突き出すすばるの態度は毅然としている。自分とあおいをつないだそれが、今度はみなとにつながると信じている。

変わらないものを確かめようとしているのは序盤のあおいと同じなのに、どうしてこうも受ける印象が異なるのか?
それはすばるが、みなとの変化を肯定しているからだ。

「僕は君の知らない僕に変わったかもしれない。ほとんど別人みたいにさ」
「うん、そうかもしれない。でも私、友達に教えてもらったの。だから、」

変わってしまった相手の中に、変わらないものを見つけ出せることを、すばるはもう知っている。「変わってもすばるはすばる、私は私」と笑った、あおいの言葉を覚えている。
見た目も居場所も言動も違う、自分の知らないみなとの中に、すばるは果敢に踏み込んでいく。すばる自身も、強く変わっていくために。

「みなと君はみなと君だよ」

そしてその勇気は、みなとの中に潜んでいた、変わらないみなとを見つけ出す。

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「きみはそうやってまた、どこからか扉の鍵を見つけてくるんだね」




つづく。
……しかしホント、どうなってしまうんだろうかこのアニメ。2010年代に刻まれる傑作だと思うのですが。
毎週がクライマックスで観るたびこころが爆発してしにそうになっている。