『天体のメソッド プレミアムイベント』に行ってきた(昼の部)

最高だった。この作品に会えて良かった。

13時。昼飯のラーメンをしこたま食べた私は新宿駅のダンジョンを抜けて、新宿文化センターへと向かっていた。
アニメのイベントというやつに出るのは実のところ初めてで、さして期待はしていなかった。演じた声優が喋るということにあまり興味がなかったのだ。軽く見ていたともいえる。
ならなんでイベントに出たかって、『天体のメソッド』という作品がブログのタイトルの由来にするくらいに大好きだからだ。
お布施とライブと会場限定グッズが目当てのイベント参加。会場に着いてインフィニットの物販列に並んだ私は「天メソイベントなう」あたりのクソツイでも呟こうと何気なくTwitterを開いた。そしてそれが目に飛び込んできた。

 


 「えっ」
思わず声が出た。後ろに並んでいる人に変な目で見られた気がするが気にしない。
どういうことだろう。今回の天メソイベントはそもそも抽選応募者全通疑惑(私が確認した限りでは1人外れていた方がいたが)があるくらい来場者が少ないはずのイベントで、その上一般販売分の在庫と昼公演・夜公演チケットを持っている人用の在庫はあらかじめ分けてあるはずで、なのにどうして……
困惑している間にも並びは進んでいき、気がつけば売り場前。ひとまず訊くだけ訊いてみる。
「B2タペストリーって在庫もうありませんか?」
「申し訳ございません……」

f:id:n_method:20150426233539j:plainけっこうな死にたさを抱えて何のグッズも買わないまま自分の席へ行った。
昼の部は1階4列。かなりの好位置だが、肝心のテンションはちょっとばかりしぼんでいる。というか、会場人多いな。9割以上席埋まってるぞ。
気を取り直す。
決して、キャストトークに対してまったく興味がないというわけではない。公式ファンブックのインタビューを見る限り作品をしっかりと読み込んでいるのは明らかだ。きっと何か発見がある。
何よりまだライブがある。fhánaの生歌だ。星屑のインターリュードだ。
物販なんて最初からなかったんだって、何度も、何度も自分に言い聞かせて。
イベントは始まった。

昼の部の構成としては
①キャストによる自分が演じたキャラの好きな台詞
②ネットで実施した名シーン投票の結果発表
③BD7巻映像特典・オリジナルショートアニメの一部紹介
④『そらメソラジオ』でやっていたコーナー(そうさ! ソーサー捜査)の拡張版
⑤fhánaとLarval Stage Planningのライブ
⑥〆のキャストコメント

といった流れ。
MCは古宮乃々香役の夏川椎菜さんと、ノエル役の水瀬いのりさん。夏川さんは髪を乃々香のように片方にあげてまとめていた。恐ろしくさらさらの黒髪だった。

石川界人(水坂湊太役)と化粧水・その後の肌の調子や、水瀬いのりさんの推しお米「ゆめぴりか」の話などをはさみながらコーナーは進行していった。


①キャストによる自分が演じたキャラの好きな台詞
まずは夏川椎菜さんから。本人による生演技だ!!

「私の願いは……みんながにっこりになること」(11話)

……納得だ。ぐうの音も出ない。
決意した乃々香が汐音の家でみんなの特徴を並べて、汐音の本質を告げ、自分の願いを語るシーン。この後「ノエルが素敵だって言ってくれたその願いの中には、汐音のにっこりも入っているんだよ」と続く。普通にきゅんとくる。私はきゅんときた。

次は豊崎愛生(水坂柚季役)さん。

「ありがとう」(2話)

 ……完璧だ。ぐうの音も出ない。
6話の「ありがとう」、キャラクターソングアルバムのモノローグ『柚季から乃々香へ』での「ありがとう」を踏まえるとぐんと味わいが増す。5話の「ごめんなさい」も良いけど、やっぱり「ごめんなさい」より「ありがとう」だよ。
また、豊崎さんがここでぶっちゃける。
「柚季はあまり好きじゃない人いっぱいいると思うんだけど」
おいおいそこ突っ込むの!? とビビりながら話を聞くと、各キャラファンの敵になりやすい柚季だからこそ、自分は逆に良いところを探したらしい。良い人だ。
結果、なんでもまっすぐ、オブラートに包まずに言う子だと捉えたという。
そんな奴が周りにそう居てくれるか? いやいない。
実際、柚季はその持ち前の行動力で6話以降の乃々香、汐音の後押しをする。言わずもがな、柚季のデフォルトはそちらだ。愛生さん、水坂柚季を完璧に捉えている……(公式ファンブックでも似たようなこと言ってたけど、言葉で聞くと重さが違うよね……)

続いては石川界人

「なあ、どう思う? 来年は俺、この街にいないんだぜ? 誘ってくれてもいいと思うよな……」(6話)

佳村はるか「なんかごめん」
他、「いたいよういたいよう、お腹が痛くてしんじゃうよう」(7話)なんかも好きらしい。湊太は時折見せる少年らしさがぐっとキャラに深みを増していて最高だと思う。

で、4番目はその佳村はるかさん(椎原こはる役)。

「だって、私は看板娘なんだから!」(7話)

 石川プロ「こはるーっ! こはるーーっっ!!」
だんだん石川プロのタガが外れてくる。

5番目は小松未可子さん(戸川汐音役)。

「本当に迷惑」(13話など)

 小松さんいわく、汐音の台詞にはだいたいその後ろに(本音)が付くという。
「本当に迷惑(迷惑とは言ってない)」など。文面にするとさっぱり意味がわからないが、観ている人ならわかるのではないだろうか。
それにしてもヘッドホンで乃々香の声を再生している疑惑には参ったな! マジモンのクレイジーレズじゃねーか!

ラストは水瀬いのりさん。

「ののか~!」

ノエル~!
まあ、突き詰めればこの二人で終わる物語だし、すごく正しい選択だ。


②ネットで実施した名シーン投票の結果発表
昼の部では「ニッコリになったシーン」が計4シーン発表された。以下に記す。

2-1, 温泉(6話)
柚季が温泉に浸かっている。
「えっ」
本日二度目のえっである。
正直これは予想外だった。スクリーンに映し出される映像はBD版ではなくテレビ放送版、湯気がもうもうとたちこめている。それでも乃々香の尻はエロい。
ニッコリじゃなくてニヤニヤじゃねーか! と女性キャストは総ツッコミ、一方石川プロはよくやったと大手を振って喜んでいる。なんなんだアンタは。
汐音のバストは豊満だった。

2-2, のぞみ亭でオムライスを食べるノエルと汐音(5話)
ああ、なるほどといった感じ。純粋に可愛いノエルと、面持ちは厳しげなのにやってることはコミカルな汐音のコントラストが眩しいカットだ。ミルクと砂糖を惜しげもなく注ぎ入れる汐音にはキャスト一同ツッコミと苦笑の嵐。そういえば久弥直樹作品のヘンな食べ物要素ってここだけだったね。

2-3, 看板を出そうと入り口で悪戦苦闘するこはると、それを見かねる湊太(1話)
うむ、かわいい。小首をかしげるところとかもう最高なのである。って界人くんが言ってた。同意するしかなかった。
話すうちに佳村はるかさんから一言。「こはるは黒い子ではないのです」
実際、そういう演技指導もあったらしい。ここ大事。

2-4, 13話Cパート
説明不要。
MC2人を除く4人のキャストが突如椅子から飛び出した! スクリーンに映るノエルを抱きしめようと両腕を広げる。
石川プロが「ほんとかわいいなぁ……」と嘆息して水瀬さんが軽く引いていたことは書き留めておきたい。


③BD7巻映像特典・オリジナルショートアニメの一部紹介
まだ声当てもしていないらしい。
非常に断片的で短いため説明が難しい。適当に箇条書き。
・タイトル『ある少女の休日』
・探偵風の乃々香たち。牧場にいる? 何かを調査している? こはるはメガネ着用
ゴジラめいたキリゴンが映る
・汐音の後ろ、湖沿いの路地にキリゴンの看板。追いかけているような?
・ノエルは映る
・湊太は映らない

石川プロ「(´・ω・`)」
つらいな……円盤のジャケットになれるかどうかが湊太の分水嶺


④『そらメソラジオ』でやっていたコーナー(そうさ! ソーサー捜査)の拡張版
お題はホットケーキ。くじで引いた道具を使って、2人1組でホットケーキ型のクッションをひっくり返していく。
思いの他苦戦せずに全員がひっくり返し、裏面の文字を組み合わせる。
文字列ができあがる。「こっそなみりん」もとい「みんなこっそり」。
……ガチで準備ミスかと思ったが、なんかこれで合っているらしい。
一番活躍した人を拍手で決める。石川界人、ナンバーワンになってしまった。あんま活躍はしてなかったような……まあいいか
景品はなんか厚手のスイーツ系ホットケーキ。後で食べることに。


⑤fhánaとLarval Stage Planningのライブ
1曲目は『星屑のインターリュード』。トリを飾ると思っていたのでこの選択には驚いた。
向こう10年はこれ以上のアニメソングは出ないんじゃないかと思える名曲中の名曲。スクリーンの映像とともに、思い起こされるのは最終回の夢心地と虚脱。
あの時からここまで心の中に残っていた作品が、今地続きにつながって、止まっていた時が動き出すような錯覚。
音響が轟く。心臓を直接叩かれるような振動が走る。映像が音楽が声が表情が、頭を、身体を、じーんと強く痺れさせる。これが至近距離のライブ……前列のライブ……

「綴った手紙はそして空一面に今散らばった」

towanaの透き通った声がホールの空に伸びていく。天井など知らぬとばかりに。多くの観客の青いサイリウムが頭上にすうっと掲げられる。自分がサイリウムを持っていないのをこんなに後悔した日はない。
その後も、『ソライロピクチャー』、7話特別ED『ホシノカケラ』と続き、最後はライブでは初演奏となる11話特別ED『天体のメソッド ~Quote from Stardust Interlude~』。この頃には私はもう参ってしまっていて、膝ががくがく笑っていた。それでも一分一秒をなるべくこの身に吸い込もうと、やっきになって手を振っていた。
歌手が変わり、続いてはOPを担当したLarval Stage Planning。まずは13話挿入歌『North Method』。映像は勿論13話ベース。
楽曲による作品の再体験はここで終わりを迎える。そしてライブの、イベントの最後となる曲は、OP『Stargazer』だった。

放送は終わった。イベントも終わる。BD7巻が発売すれば、きっと作品の展開も終わる。終わってしまう。
けれど、だからこそ、だろうか。〆は『Stargazer』なんだ。きっと、この曲でなければならなかったんだ。そう強く思う。
それは5人がノエルと再び出会えたように。忘れなければ、そこに『天体のメソッド』はあると。
終わってしまうのなら、また始めればいいと。
作中で関係性の切断と再縫合を描き続けてきた『天体のメソッド』は、最後の最後、このイベントで、受け手と作品の関係にそのテーマを突きつけてきた。

こんなの、心に残らないほうがおかしい。


⑥〆のキャストコメント
誰もが良いことを言っていたんだけど、もはや覚えていない。
水瀬いのりさんが、何度も観てほしい、と言っていたのは覚えている。



昼の部が終わり、ふらふらと会場を出た。
これがアニメのイベント……カルチャーショック……これは高いチケット代を払っていく人が多いのも頷ける。
私は何気なくTwiterを開いた。そしてその知らせを見た。

世界は生きるに値する。